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ボチボチと生きてくよ!秋田篇

35年振りに故郷に戻り生活することになった、気がつけば中高年の泣き笑いなど。
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ベニーさんは良い人だ

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P.Angenieux Paris Anastigmat 45/f2.9(L)(1949)


雪深いN県にある、こじんまりとしたスキー場…。

まだ関○自動車道が全面開通しておらず、クルマで行くには
いくつもの峠越えで、それなりの忍耐力を要したけれど、
開通してしまうと、俄然利便性が高まり、周辺のスキー場は
軒並み大流行り。

後年、そこいら一帯は、突然地価が暴騰し、
リゾートホテルやマンションが乱立するようになって、
いわゆるバブル景気の象徴となる地域だが、
まだ時代はそこまで深まっておらず、牧歌的で
こじんまりしたゲレンデ脇の小さなスキーロッジが
本日の舞台である。

60年代に自己破産した某大物タレントK(今も現役でサライ?)の
所有物だったそのスキーロッジを、負債の肩代わりか競売か、
よくは知らぬが、会社(芸能プロ)が入手したものらしい。

オフシーズンも含め、通年開業しているのは、
ひとえに、そこに常駐で勤務している支配人やシェフや
従業員の方の生活基盤がそのロッジにあるからに他ならず、
そこに働く、比較的ご高齢の方々は、支配人こそ、
立志伝中の芸能プロ社長のご兄様だが、その他は社長の
バンドマン時代のメンバーや、プロダクション創立期に尽力された方々…。
ハナさんや植木さん、谷さんら世代の、さらにその先輩たる方々だ。

そんな感じだから、オンシーズンの冬は冬で、
週末ライヴとかで当番制のように、タレントやバンドが東京から
駆り出され、私など下手をすると毎週のように通ってたり
したわけだけれど、実はオフシーズンの夏場には、
コンサートツアーが近いタレントとバンド、ダンサーや
コーラスさん方のリハーサル合宿だったり、芸人さんたちの
ネタ作りや、ワークショップなどで、それなりにロッジは忙しく、
大先輩たる、今は黒服のベテランスタッフさん達も大忙しなのだった。

そうしたわけで、ある年の秋、季節外れのスキーロッジに
私は到着した。

新しく結成した「お仕事バンド」の音固めと、バンドの
プロモーション用音源を作るため、そこに二泊する。

到着すると、顔見知りの支配人が...

「あれえ、ゆにっとなんとかって...、Pちゃんのバンドだったんかい?」

「うん、急に決まっちゃって…ヨロシクお願いしますね」

そんな調子で、冬期には、宿泊客以外にも大勢やって来る
レストラン・バーで、ライヴハウスにもディスコにもなる
ラウンジで、我々は音を出し始めると、早速、進駐軍廻りの
思い出話にいつも付き合わされる、往年の老バンドマン達が
燦々度々、集まり始めた。

しかし….その大先輩たちが、意外に「うるさい」のだ。

「今のとこ、ストントトンじゃなくて、間にベードラ咬まして
 ストドトドトンだろ?」

「Em7のとこさあ、短5度…挿した方が、それっぽくなるんじゃね?…」

「た、たんごど…っすか?」

我がお仕事バンドは、私以外は、東京芸大、桐朋出身者と、
ドラマーは長い事、某有名ドラマーのボーヤさンだった人。
各人が、ジャズやフュージョンの大御所のバンドや、大歌手の
伴奏者等々、輝かしい経歴の人たちで、私よりも7〜8歳年上の方々。

そんな中、殆ど独学素人同然で、しかも最年少(21か22歳だった)
で、経験も豊富とはいえない私…。

ただただ、ギター自体の腕よりも、バンドマン以外にも
様々なギョーカイ人の役を演じていた(?)関係で、
奇妙に幅広い人間関係や交渉力(?)から、敢えてアイツを入れておこう!
的に、バンドに誘われた感じのそうした立場に、実は不安と苛立、
そしてある種のコンプレックスを抱えていて、そこに、大先輩たちの
直球過ぎる指摘等に、実はびくびくしてたりするのだった。

さらに不安とコンプレックスの大きな原因と理由は、
バンドのメンバーも大先輩方も皆が皆、根本的に

「ジャズ屋さん」であること。

ロックなんて、ハナから小馬鹿にしてる感じだから、
ギターの音を少し歪ませただけ、ペンタトニックやブルーノートを
ちょろっとなぞっただけで、クスッと笑い声が聞こえたような
そんな恐れを抱いていたり、また、チョーキングヴィブラート
っていうロックギター特有の小技を使っただけで、

「音程はきちっとな...!」等と、指摘され
他にも様々ある、ロック的な音出しのクセみたいなもので
むしろ音程がボヤカすような、グリッサンドというか、
ポルタメント的な技法には、おもむろにイヤな顔をされる。
それがまた、こちらの苛立ちの原因でもある。
(変なしゃくり癖っていわれてた..たぶんクラプトンの真似が
抜けきれてないのだ.....)

でも、やっぱりお仕事の為には、より強固で完璧な
アンサンブルとバンドのノリを構築せねば。そして
何よりもサックスやピアノとのハーモニー優先だから、
わざとベタなカタカナ発音で英語を話すような感じで
1音1音はっきり発音するような弾き方をしたりして
それが結構、自己嫌悪に陥ったりする。

しかし、何せこのバンドは業界内でも相当に期待され、
且つ同業者には異常に警戒され、どういう経路か、
こちらの情報が、だだ漏れ状態なのも知っていたから、
尚更焦る…失敗できないって思いも強かった。!。

あんまり音楽…楽しくないな…そんなことを思いつつも
やがて夕食を済ませると、支配人が「オレの部屋に来い、
みせたいものがある」というので、メンバーと、ごそごそ
支配人の部屋?に入ると、ベータマックスの巨大なビデオデッキがあって、
観せてくれたのが、ベニーグッドマンの武道館公演。

そうだ、そういえば、来日してたんでしたねえ…。

支配人はウットリしながらビデオを見つめ、云うのだ…

「オマエらさあ、まだ若いから、これが分かるかどうか
微妙だけどな、この音量、バランスこそが本当のジャズなんだよ」

クラーの息づかい、ピアノの今一瞬だけこっそり叩いたテンション、
ベースの絶妙な間引き方…完璧だね。

「自分の音より、隣の楽器の音、あるいは周囲のサウンド
全部を、身体に染み込ませて、まずは演奏者自身がそれを
楽しむってのが、ジャズの本懐なんだなあ…」

支配人は、画面から視線を外さなかったが、
暗に自分に云ってくれてるのだな…すぐにそう感じた。

確かに自分は余裕もなく、己のプレイだけで精一杯…
そんな今日の自分だった。いや、もしかすると、
いつもそうだったのかもしれない…。

仲間の発するサウンド、ノリを身体に感じながら、
自分の音を自然にブレンドしてゆく…そうか、明日から
心掛けてみよう…。

すると単純だが、何だか音楽が俄然楽しくて、
明るいものになったような気がした。

今でもたまにだが、ベニーグッドマンを聴く。

信頼する仲間たちが居て、自分が居る…。
仲間たちは私の音を聴き、私も仲間たちの奏でる音を聴く。
当たり前のことだが、そこに音楽が生まれる。

自分の功名心やら、慢心やらで、音量を上げ、
手前勝手なプレーをすれば、仲間も上げて…。

音楽はその途端、破綻する。

そんなことを思い出させてくれるのが自分にとっての
ベニーグッドマンで、かけがえのない「宝石」だったりする。

まったく蛇足なのだが、その時の自分たちのバンドは、
結局は、ちょっとした人間関係の縺れと、イヤな感じの金銭問題が
絡んで、まずは私が閉口して脱退し、その後間もなく瓦解し
プロジェクトは失敗する…。

私はまだ独り者だったけれど、他のメンバーには家庭があって
子供が居て、入進学…そこまでの生活感は、当時の自分には
なかったな…反省すべきは私であったかもしれない…。

Benny Goodman - Memories of You


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2 Comments

ギターマジシャン says..."ベニー・グッドマン"
ベニー・グッドマンがオーレックスジャズで来日した時は、テレビで見て、伝説の人がまだ存命で日本で演奏してくれたのに、まずは感動しました。

チャーリー・クリスチャンを見出して、ジャズギターがメジャーになるきっかけを作ってくれた恩人とはいえ、ビバップ以前のムード音楽、ダンス音楽だよなあと思っていましたが、テレビから聴こえてくるのは、すごく訴えてくる演奏で、クロスオーバー、それもギターの早弾きに夢中だった自分でも感動したのを覚えています。

ジャズとロックの件、ジャズギター教室に入った初日に、先生から、ネックを握るのはロックの悪い癖だと笑われたり、何で音を伸ばす時にビブラートをかけるかなあと馬鹿にされたり、ロックは下に見られているのを実感しました。
2017.12.26 23:24 | URL | #- [edit]
pipco1980 says..."ギターマジシャンさん まいどです"
さすがギターマジシャンさんです。しっかりベニーグッドマンまでチェックしてましたか!
わたしは、もうテレビを見る何て余裕など全くない時代で、やや遅れたこの時のビデオが
初めてでした。やっぱり、妙な迫力というか、異様な生々しさに相当驚いたのを覚えています。

たぶん、自分も新しいバンドのプレッシャーもさることながら、いいとこ見せたろ的に
ガラにも無く、力んだ演奏をしてたのだと思いますが、テキメンに批判に晒される事になり、
相当に凹んだ日...という事になります。メンバー各自が、演奏したい曲のスコアを用意したら、
結構クルセダーズの曲が多くて、私はついつい、ラリーカールトンやあ!って羽目を外して
少し歪ませつつ弾いたら、「オマエさんはアンサンブルが全然解ってないな!」って、
又批判されるわけです....どうしようもないっすね...。ビブラート...あたしも随分いわれましたよ!。
2017.12.26 23:45 | URL | #- [edit]

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